編集支援:阿部匡宏/ロゴ:配野美矢子
   編集:岩田忠利     NO.196 2014.9.03 掲載 

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 こんなユニークなお寺があるなんて!

 
    武蔵小杉「常楽寺 通称“まんが寺”

                                                 

   沿線住民参加のコミュニティー誌『とうよこ沿線』。好評連載の“復刻版”


   掲載記事:昭和55年12月1日発行本誌No3 号名「柊」

   
取材・文 :浅野桂子 (学生 菊名)  写真:川田英明 (日吉)



     寺じゅう、風刺まんが6500点……


 案外自分の家の近辺のことって知らないんですね。まんが寺を訪ねた私は、まさにコロンブス″でした。
 名前から連想していたものは、お寺の本堂に山と積まれた少年少女まんがの本。まんがと言えば劇画しか思い浮かばない想像力の乏しさ。


  玄関のベルを押すと、ご住職の土岐秀宥(どき しゅうゆう)さんがトレーニングウェア姿で現れ、私はびっくり。そして本堂のふすまや壁面におびただしく描かれたまんがに、二度びっくり。まんがはまんがでも「風刺まんが」だったのです。

 ご住職はテレビに4、50回出演され、もはや有名人。その語り口は落語調。ユニークなお寺のユニークなご住職から、いろいろお話をうかがってきました。

 本当にお寺じゅう、まんがだらけなのです。こういうお寺は、日本でもここだけだそうです。通称まんが寺、寺号春日山常楽寺は真言宗のお寺です。
 真言宗と言えば密教、密教と言えば加持祈祷を重んじる、その昔貴族が信仰した宗派。その宗派とまんががどう結びつくのかピンときません。

 ご住職日く、「日本のまんがの元祖は、平安時代の鳥羽僧正の描いた鳥獣戯画ですよ。だから私もまんがを寺に置くことにしたんです。現代の劇画は置きませんよ。まんがは、ユーモアと風刺と芸術性のあるもののことを言うのです。今の劇画にはそれがありませんからねえ」。

 なるほどと思い、家に帰ってさっそく高校時代の日本史の教科書を見ると「鳥獣戯画」は、平安時代の貴族社会や仏教界を鳥獣に擬して風刺した作品だと書かれてありました。

 私とカメラマンの川田さんは、本堂でご住職から一枚一枚描かれているまんがの説明を受けました。
  昭和42年から5年間かけて、「明治百年風物詩」を全国の漫画家に呼びかけて描いてもらい、日本で唯一のまんが寺が武蔵小杉に誕生。ご住職の代以前は、単なる普通のお寺だったのです。引き続いて大正編、昭和編が完成し、なんと! 現在本堂の中のまんがは6500点以上――。

 なかには説明をお聞きしなければ意味がわからないようなまんがもありました。風刺まんがを描く人ってよく物事を考えているんですね。女性にとっては顔を赤らめるようなものもありました。

 このユニークなご住職は年齢
71歳。まんがと結びついて37年。ご住職になられる前は、川崎市役所の社会教育課にお勤め。「そのお方がまんがをお描きになるの?」と聞くと、
 「私ははじ″をかいています。はじ″とは、字を書く方のことです。漫文を書いています」と笑う。

 落語家みたいな語り口といい、笑いといい、ご住職は「江戸文学」でも勉強なさったのかしら。



市職員だったご住職、説明は落語調。ながーい釣り竿みたいな棒を手に








ふすま絵も有名漫画家が描いている






本堂内は、世相風刺のまんがが6500点以上も



   重要史跡と天然記念物がある歴史あるお寺


 まんが寺という通称があまりにも有名になってしまいましたが、常楽寺としてもこのお寺は人々に見学される価値を持っているのです。このお寺は、川崎市で唯一の重要史跡と天然記念物に指定されているのです。

 中右記(宮内
庁にある重要文化財の書類)に、平治元年(1159年)にこのお寺が宮中の祈願寺になったと書かれているとのことです。
 御本尊様は
900年も昔のもので、今の本堂は元禄2年(1689年)に建てられたという、古い歴史を持つお寺。川崎市としては珍しいこんもりとした森の中にあるお寺です。

 まんが寺を見学されたい方は、団体予約(ご住職の説明の都合上)を。見学料は絵はがき付きで300円。
 なお
15歳以下の方は大人同伴でも見学できません(風刺まんがなので理解できないことが多いので)。婦人会、老人クラブ、PTAの団体が多いそうです。




本堂正面は静かなたたずまいの常楽寺



900年も昔のご本尊様も、まんがに囲まれて


 常楽寺:川崎市中原区宮内622
 TEL:044−766−5069

 お知らせ

  現在の「まんが寺」は、上記の住職・土岐秀宥さんが他界、外部から着任の新住職になり「日本漫画博物館 まんが寺」と名称も変わっています。
 漫画見学ご希望の場合は、上記に電話し必ず“予約”が必要。拝観料は、500円(絵葉書付き)。
(岩田忠利)

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